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【書評】中堅会社員にこそ響く。労働が消滅したユートピアSF、野﨑まど『タイタン』が教えてくれる「これからの働き方」

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「何のためにこんなに忙しく働いているんだろう?」

「もし、明日から働かなくても生きていける世界になったら、自分には何が残るだろう?」

「働く意味って何なんだろう」

30代になり、ある程度仕事の全体像が見えてきたり、チームを任されるようになったりする一方で、ふとそんな根源的な問いが頭をよぎることはありませんか?

日々業務に追われ、キャリアの曲がり角に立つビジネスパーソンにこそ、今読んでほしい最高の1冊があります。

それが、野﨑まどさんのSF小説『タイタン』です。

本作は、「一度も働いたことのない人間」と「一度も休んだことのないAI」が紡ぐ異色のエンターテインメント小説。

私たちが当たり前のように受け入れている「働くことの前提」を鮮やかに揺るがしてくれる作品です。

1. 『タイタン』のあらすじ:労働から解放された「完璧な未来」

舞台は、至高の超巨大AI『タイタン』によって社会の全システムが平和に維持されている未来。

人類はすべての≪仕事≫から完全に解放され、何不自由ない自由なユートピアを謳歌しています。

主人公の内匠成果(ないしょうせいか)は、25歳にして一度も就労経験がなく、趣味で心理学の研究論文を書いているだけの、いわば「働く必要のない世界」の住人です。

しかしある日、世界でもごくわずかしかいない≪就労者≫のナレインから、突然の依頼が舞い込みます。 「貴方に≪仕事≫を頼みたい」

託されたのは、突如として機能不全に陥ってしまった巨大AI『タイタン』のカウンセリング(メンタルケア)という、前代未聞の任務でした——。

2. 30代会社員の胸に突き刺さる「3つのポイント」

本作には、満員電車や重要なことの決まらない会議、仕事人間の悲哀など、現実の私たちが日々体験している生々しい“仕事の辛さ”も織り交ぜられつつ、AIの進化により不自由のない世界になっています。

昨今のAIが急速に発展しているからこそ、未来の物語として興味深く感じる部分があります。

① 「仕事を難しくさせるのはいつも人間だ」という強いリアル

AI(タイタン)が研究も創作も完璧な成果を上げてしまう世界では、人間が担う意味は薄れ、むしろ人間そのものが摩擦の原因になりかねません。

劇中で就労者のナレインが放つ「仕事を難しくさせるのはいつも人間だ」という一言は、職場の人間関係やマネジメントに悩む30代のビジネスパーソンにとって、強い実感を伴って胸に刺さるはずです。

② 「一生を捧げる」という強いベクトルを一度脱いでみる

著者である野﨑まどさんはインタビューで、現代人は仕事に対して「一生を捧げる」「生きがいを見出す」といった強いベクトルにとらわれがちだと指摘しています。

そして、本作を通じて「人生を懸けるかどうかといった強いベクトルは、一度脱いだ方がいいよ」というメッセージを投げかけています。

「当たり前」として満員電車に揺られ、会社のために無理を重ねる生き方から一度距離を置き、貨幣経済も労働もない世界を擬似体験することで、「私たちは本当はもっと自由に変わっていけるのだ」という視点を取り戻せます。

③ 自分のしていることは「仕事」なのか?という迷いへのヒント

劇中では「狩猟は仕事か?」「食べることは仕事か?」といった対話を重ねながら、仕事の本質を丁寧に探っていきます。

日々のタスクを消化するマシーンのようになってしまい、「自分の仕事の意味」を見失いかけている人にとって、本作は仕事への向き合い方を静かに見つめ直す豊かな「ガイドライン」になってくれます。

3. 哲学的でありながら、圧倒的スケールのロードムービー

テーマこそ「労働の定義」という哲学的なものですが、物語は決して退屈な議論だけでは終わりません。

機能不全に陥ったAIの「人格」は、成長に応じて姿や外部との関わり方を変えていき、主人公の内匠と対話を深めていきます。

そのプロセスは、まるで部下の育成や、子どもの成長を見送るような、嬉しさと寂しさが同居する不思議な感覚を味わわせてくれます。

さらに物語の後半では、内匠とAIが世界の輪郭を確かめ直すために、様々な土地を巡るダイナミックで巨大なスケールの冒険譚へと発展します。

誰もが口にできるような「ありきたりな言葉」が、旅の経験を経て、体温のある“自分の言葉”へと変わっていく過程は圧巻の一言です。

まとめ:読んだ後、明日からの「働く景色」が少し変わる

野﨑まどさんの『タイタン』は、“働かない”が前提になった社会に対して反抗したり、ディストピアを打ち倒したりする物語ではありません。

制度をニュートラルに受け入れつつも、前提を点検し、意味を更新していく誠実なSFです。

「そういうものだから」と流されて働きがちな中堅世代だからこそ、当たり前のことの意味を捉え直し、自分のものにしていく主人公の姿に、大きな刺激を受けるはずです。

  • 今の働き方にモヤモヤとした疑問を抱えている人
  • 「仕事とは何か」という問いをじっくり考えてみたい人
  • 壮大なSFエンタメを楽しみつつ、思考のアップデートをしたい人

生成AIが急速にビジネスに浸透している今だからこそ、この本が描く未来はリアルに響きます。

読み終えたとき、明日からの仕事に向かうあなたの心が、少しだけクリアになっているかもしれません。

参考記事

「働く」問う異色SF「タイタン」野﨑まどさんインタビュー 労働が消滅したユートピアがコロナ後の私たちに突き付けるもの|好書好日

【良書紹介】野崎まど『タイタン』一度も働いたことのない人間と、一度も休暇んだことのないAIの物語

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